「M&Aで起業できるってどういうことだろう?」
「なぜ起業手段としてM&Aを選ぶべきなのか?」
といった疑問を抱えていませんか?この記事では、M&Aを通じた起業のメリットや、個人でも活用できるチャンスについて詳しく解説していきます。
この記事を読むことで、以下の重要なポイントがわかります:
- M&Aを活用した起業の具体的なメリット・特徴、プロセス
- 個人でも可能なM&Aの条件と適した業種
- 成功する買収起業に必要な実践的ポイント
僕自身、12年間M&Aアドバイザーや経営コンサルタントとして活動しながら、自身でも個人買収を通じて起業。その後、事業売却までの経験があるため、読者の知りたいリアルを本ブログを通してお届けしていきたいと思います。
この記事を最後まで読んでいただければ、M&Aを活用した起業への道が具体的に見えてきます。あなたも、コストを抑えながら起業のチャンスを掴む未来を実現してみませんか?
個人M&Aの定義と基礎知識
個人M&Aとは
個人M&Aとは、個人が企業や事業を買収することを指します。通常、M&A(Mergers and Acquisitions)は、大企業同士や企業グループ間で行われるイメージがありますが、最近では個人が中小企業や零細企業を買収して経営を引き継ぐケースが増えています。個人M&Aは、企業を一から立ち上げる起業方法とは異なり、既存の事業や顧客を引き継ぐことで、経営を素早くスタートさせることができるという特徴があります。
個人M&Aの主な特徴
– 既存の事業を取得:ゼロから事業を始めるのではなく、すでに運営されているビジネスを買収するため、顧客や従業員、設備などがすでに整っています。
– 迅速なスタート:新規事業を立ち上げるには時間がかかりますが、個人M&Aでは、既存事業を引き継ぐことで、即座に経営を始めることができます。
– 買収資金の必要性:個人M&Aを行うためには、事業を買収するための資金が必要です。しかし、これも金融機関の融資や他の資金調達方法を利用して対応できる場合もあり、手の届く範囲の案件も多いです。
個人M&Aは、ビジネスを拡大したい人や新たな挑戦をしたい人にとって、有効な手段の一つと言えるでしょう。
個人M&Aが増えている背景
近年、個人によるM&Aが増加しています。この背景には、いくつかの理由があります。
高齢化と事業承継問題
日本では多くの中小企業の経営者が高齢化しており、事業を引き継ぐ後継者がいないケースが増えています。後継者が見つからない場合、経営者は事業を閉じざるを得ないことが多く、このような事業を他者に譲渡する「事業承継M&A」が今非常に注目されています。個人がこれらの企業を買収し、事業を引き継ぐことで、企業の存続が図られるということです。
1.起業のハードルが下がっている
また、従来、起業には大きなリスクとコストが伴いましたが、M&Aを利用することで、そのリスクを低減することが可能です。既存のビジネスモデルや顧客基盤が確立している企業を買収することで、起業初期の不安定な時期を避けることができ、より確実に経営を軌道に乗せやすくなります。
2.金融機関のサポート強化
さらに、金融機関や公的機関も個人M&Aを支援する動きが強まっています。事業承継を支援する制度や、M&Aに特化したマッチングサービスも増えてきており、個人が企業を買収するハードルが下がっていることも背景にあります。
3.自由な働き方を求める流れ
最後に、リモートワークの普及や、副業解禁の流れから、個人が独自のビジネスを持ちたいというニーズが高まっている背景も無視はできません。M&Aは、自分の得意分野でビジネスを始めたい人にとって、効率的な選択肢の一つになるかと思います。
個人M&Aと企業どうしのM&Aの違い
個人M&Aと企業どうしのM&Aは、基本的なプロセスは似ていますが、いくつかの違いがあります。特に、資金規模や交渉の進め方、買収後の運営におけるアプローチが異なります。
1.資金規模の違い
– 企業間M&Aでは、数十億円・数百億円以上の大規模な取引が行われることが多いですが、個人M&Aは数百万円から数千万円規模の小規模な取引が中心です。このため、個人でも比較的手の届く範囲で企業を買収することが可能です。
– 中小企業や家族経営の事業など、小規模でありながらも利益を出している会社を対象にすることが多く、リスクを抑えながらビジネスを始められます。
2.交渉の進め方の違い
– 企業間どうしのM&Aでは、複数の企業が関与する場合もあり、交渉や調整が複雑になることがあります。スキームも複雑難解なこともあり、大変な労力や手間がかかります。
一方で、個人M&Aの場合、売り手と買い手が直接交渉することが多く、企業どうしのM&Aと比べれば、比較的シンプルに進めることが多いです。
– ただし、交渉がスムーズに進むよう、できればM&Aの経験がある弁護士や税理士などの専門家の意見も聞いたほうがいいでしょう。
3.経営における役割の違い
– 企業どうしのM&Aでは、買収後も大規模な組織運営が求められますが、個人M&Aの場合は、買収者自身が直接経営に携わることが多いです。買収者は、オーナー兼経営者として事業を運営し、自らの判断で企業を成長させる役割を担います。
– また、企業どうしのM&Aでは、組織文化やマネジメント層の調整が重要な課題となりますが、個人M&Aでも重要ではありますが、企業どうしのM&Aよりは比較的フレキシブルな運営が可能です。
4.リスクとチャンスの違い
– 企業どうしのM&Aは、規模が大きいため成功すれば莫大な利益を得ることができますが、その分リスクも高く、失敗した場合の影響も大きくなります。
– 一方、個人M&Aは、リスクが比較的低く、買収後も自分の裁量で経営を進められるため、柔軟に対応することが可能です。また、規模が小さいことから、少額の投資で高いリターンを得るチャンスもあります。
個人M&Aは、企業間M&Aに比べて手軽に取り組むことができ、経営者としての自由度が高いのが特徴です。そのため、特に中小企業を対象とした買収や事業承継を考えている個人にとって、非常に魅力的な選択肢となっています。
個人M&Aが成り立つ条件
個人でもできるM&Aの取引額の目安
個人がM&Aを行う際、最も気になるのが「どれくらいの金額で企業を買収できるのか?」という点です。企業間M&Aでは数億円や数十億円規模の取引が一般的ですが、個人M&Aではそれほど大きな資金は必要ないケースが多く、数百万円から数千万円程度で取引が行われることがあります。これにより、資金的なハードルが低くなり、個人でもM&Aに挑戦できるのです。
取引額の目安
– 小規模企業や個人事業主の買収:小規模な企業や個人事業主が運営するビジネスは、比較的安価に買収することができます。取引額は、事業規模や業界によって異なりますが、一般的には数百万円から1000万円程度の範囲内で取引されることが多いです。
– 中小企業の買収:少し大きめの中小企業の場合でも、1,000万円から数千万円程度の資金があれば買収可能です。特に事業承継問題を抱える企業は、後継者不足で事業を閉じるリスクがあり、そのため買収価格が抑えられるケースがあります。
– 金融機関の融資:自己資金だけでは足りない場合、金融機関からの融資を受けることもあります。日本政策金融公庫や地方の比較的小規模な金融機関などがM&Aのための資金調達をサポートしており、融資を活用して取引額を補うことが可能です。
費用に含まれるもの
M&Aの取引額には、単に企業の買収額だけでなく、さまざまな費用が発生することを理解しておくことが重要です。例えば、次のような費用が考慮されます。
– デューデリジェンス費用:買収する企業の財務状況や法的リスクを確認するための調査費用です。会計士や弁護士に依頼して行うことが一般的です。
– 仲介手数料:個人ではあまりお世話になることはないかもしれませんが、仮にM&A仲介会社を利用する場合、そのサービスに対して手数料が発生します。取引額に応じて異なりますが、数十万円から数百万円程度が相場です。(数千万円取る仲介会社もあります)
– 税金や登記費用:企業を買収する際には、税金や登記の手続きに関連する費用もかかります。
これらの費用を含めて、総合的に予算を立てることが重要です。
個人によるM&Aがしやすい業種
個人がM&Aを通じて成功するためには、どの業種に注目するかが非常に重要です。M&Aをしやすい業種、つまり個人が参入しやすい業種にはいくつかの特徴があります。これらの業種は、比較的少額で買収でき、運営がしやすいため、初めてのM&Aでも成功しやすいとされています。
飲食業
飲食店は個人でも比較的参入しやすい業種の一つです。飲食店は、すでに一定の顧客層が確立していることが多いため、事業を引き継ぐことで比較的早期に収益を上げることが可能です。また、飲食業は全国に広がっており、地域密着型のビジネスとして運営できる点も魅力です。ただし、参入障壁が低い分、熾烈な競争に巻き込まれる可能性がありますので、事前の十分な調査が必要です。
福祉・介護業
高齢化が進む日本では、福祉や介護業界も個人M&Aの対象として割と人気があります。特に介護施設や訪問介護サービスなどは需要が高く、経営が安定しているため、個人でも運営しやすい業種です。また、政府の支援が手厚いこともあり、収益の見込みが立てやすいです。ただし、介護報酬は国の施策で下降傾向にあるため、慎重な判断が欠かせません。
IT関連業
IT関連業界は、特に近年成長が著しい分野であり、個人でも運営しやすい業種の一つです。特に、システム開発会社やウェブ制作会社は、小規模でも利益を上げやすく、M&A後に成長させやすい特徴があります。IT業界はリモートワークが可能な場合も多く、経営の柔軟性が高いため、初めてのM&Aにも適しています。また、買い手が豊富にいるため、将来的な売却したい場合、思わぬハイバリュエーションで取引できる可能性もあります。
小売業
小売業も個人がM&Aしやすい業種の一つです。例えば、地元の店舗やECサイトを運営している企業を買収することで、既存の顧客や仕入れ先を引き継ぎながら、すぐに経営をスタートさせることができます。小売業は、運営に必要な知識が比較的分かりやすく、初めてのビジネスとしても適しています。僕も、初めて会社を買収したときは、小売業からスタートしました。
美容・リラクゼーション業
美容院やリラクゼーションサロンも、個人M&Aで注目される業種です。特に地域密着型のサロンは、既存の顧客層が固定されているため、比較的安定した収益が期待できます。個人で運営できる規模でありながらも、リピーター客が多いことから、事業をスムーズに引き継ぐことが可能です。
清掃業・メンテナンス業
清掃業やビルメンテナンス業も、個人が買収して経営しやすい業種です。これらの業種は、安定した契約先がある場合が多く、事業が安定しているのが特徴です。また、比較的少人数で運営できるため、個人M&Aの対象として適しています。個人だけではなく、企業によるM&Aとしても人気です。
選ぶ際のポイント
– 経験や知識を活かせるか:やはり1番は、自分の過去の経験やスキルが活かせる業種を選ぶことが成功の鍵でしょう。得意分野に注力することで、買収後の経営もスムーズに進めることができます。
– 市場の成長性:選ぶ業種が今後成長する見込みがあるかどうかをチェックしましょう。成長市場であれば、買収後に事業を拡大させるチャンスも大きくなります。
– リスクの少なさ:安定して収益を上げている業種や、景気の影響を受けにくい業界は、リスクが低く、経営がしやすいです。
個人M&Aでは、自分に合った業種を選ぶことが成功のポイントとなります。予算や自分の得意分野、将来の市場動向を考慮しながら、最適な業種を選ぶようにしましょう。
個人M&Aのメリット・デメリット
個人M&Aのメリット
個人M&Aには、企業を一から立ち上げる起業方法とは異なる多くのメリットがあります。既存のビジネスを引き継ぐという点で、リスクを減らしつつ、早期に事業を開始できることが魅力です。ここでは、改めて個人M&Aの主なメリットを紹介します。
1. 早期に事業をスタートできる
やはりスピードがM&Aの最大のメリットです。ゼロからの起業は、ビジネスモデルの構築や顧客の開拓、運営の準備に時間がかかります。しかし、個人M&Aでは、すでに運営されている企業を買収するため、顧客基盤や商品、サービスが整っており、短期間で事業をスタートさせることが可能です。これにより、事業の立ち上げ期間や初期リスクを軽減できます。
2. 既存の顧客や取引先を引き継げる
買収する企業にはすでに顧客や取引先が存在しているため、新たな顧客を探す手間が省けます。これは、特に顧客が定着している業種では大きなメリットとなります。顧客や取引先との関係を維持し、信頼関係を引き継ぐことで、売上の安定を図ることができます。
3. 資金調達のハードルが低い
個人M&Aの対象となる企業は中小企業が多いため、買収金額も比較的少額で済みます。金融機関からの融資を利用して資金を調達することが可能で、銀行や信用金庫では、事業承継やM&Aに特化した融資プランを提供している場合もあります。これにより、自己資金が少なくても事業を取得できるチャンスがあります。
4. 既存の従業員や経営リソースを活用できる
企業を買収すると、その企業の従業員や設備、ノウハウをそのまま引き継ぐことができます。これにより、ゼロから人材を育成したり、設備を整えたりする手間が省けます。さらに、既存の従業員の経験やスキルを活かしながら、新しい事業展開を図ることも可能です。
5. 成長市場に即座に参入できる
M&Aを通じて、成長が見込まれる市場に素早く参入することができます。例えば、IT関連事業や介護サービスなどの成長産業にすでに位置づけられている企業を買収することで、成長市場でのビジネスチャンスを早期に享受できます。
個人M&Aのデメリット
一方で、個人M&Aにはいくつかのデメリットやリスクも存在します。これらのリスクを理解し、適切な対策を講じることが、M&Aを成功させるためには重要です。代表的なデメリット・リスクについて見ていきましょう。
1. 買収資金の確保が難しい場合がある
個人がM&Aを行うには、一定の資金が必要です。銀行からの融資を受けることができるとはいえ、企業の規模や業績によっては、融資が難しい場合もあります。また、自己資金が不足している場合は、資金調達が大きな課題となります。
2. 経営方針の変更によるリスク
企業を買収した後、新しいオーナーとして経営方針を変更することはよくありますが、それにより従業員や取引先が混乱し、事業に悪影響を与える可能性があります。特に従業員が経営者交代に不安を感じ、モチベーションが下がることで、離職率が高まるリスクも考えられます。僕も、M&Aのアドバイザーをしていた時代に、最後のクロージング前日にキーパーソンが退職し、ブレイク(破談)した思い出があります。
3. 簿外債務のリスク
M&Aにおいて、買収する企業の財務状況を詳細に把握していないと、買収後に簿外債務(財務諸表に記載されていない負債)が発覚し、思わぬ負担を強いられることがあります。このようなリスクを避けるためには、事前のデューデリジェンス(企業調査)が欠かせません。
4. 事業運営の難しさ
個人で企業を買収した後、事業運営が思ったよりも難しいことに気づく場合があります。特に、業界未経験の場合や従業員の管理が苦手な場合は、事業を円滑に運営するためのノウハウやスキルが不足していると感じるかもしれません。買収した企業が業績不振に陥ると、投資した資金が無駄になるリスクもあります。
5. 業界や市場の変化に対応しづらい
買収した企業が所属する業界や市場が急速に変化した場合は、その変化に迅速に対応できないと、事業が立ち行かなくなる可能性があります。特に、技術革新が早いIT業界や、規制が厳しくなる可能性がある福祉業界などでは若干注意が必要かもしれません。
デメリットへの対処法
これらの個人M&Aのデメリットを避けるためには、事前の準備や適切なサポートが重要です。以下に、デメリットへの対処法を紹介します。
1. デューデリジェンスを徹底する
簿外債務や企業の財務状況に関するリスクを避けるために、買収前に徹底したデューデリジェンスを行いましょう。弁護士や会計士(税理士)といった専門家を活用し、企業の財務状況や法務リスクを詳細に確認することが重要です。専門的な知見も必要であるため、個人ですべて対応するのは難しいですが、デューデリジェンスはぜひ実行しておくべきでしょう。
2. 従業員とのコミュニケーションを大切にする
経営方針の変更やオーナー交代による混乱を避けるためには、従業員との円滑なコミュニケーションが不可欠です。買収後すぐに従業員と話し合い、彼らの意見を尊重しながら、気持ちに寄り添い、徐々に新しい方針を導入していくことで、従業員の不安を軽減できます。一気に変革するというやり方は、M&Aでは禁じ手です。
3. 業界や市場の情報を収集する
業界や市場の変化に迅速に対応するためには、日々の情報収集が大切です。業界の動向や法規制の変更、競合他社の動きなどをチェックし、事業運営に反映させることで、柔軟な対応が可能になります。
4. 専門家のサポートを活用する
事業運営に不安を感じる場合は、M&Aの専門家や経営コンサルタントのアドバイスを受けることが大切です。彼らの支援を受けながら、事業を成長させるための具体的な戦略を立て、リスクを最小限に抑えていくことがスマートです。
このように、個人M&Aには多くのメリットがある一方で、リスクやデメリットも存在します。これらもしっかり理解し、どのような準備や対策がリスクの回避につながるのか、適切な考えをもっておくことで、成功への道が開けるでしょう。
M&Aによる起業のメリット
起業にかかる時間・コスト削減
M&Aを活用した起業は、ゼロからビジネスを立ち上げるよりも圧倒的に早く事業を開始でき、コストも抑えられるのが大きなメリットなのは申し上げました。通常、起業をする際には、ビジネスアイデアの検証、市場調査、製品やサービスの開発、さらには顧客基盤の確立など、さまざまなステップを踏む必要があります。これには大きな時間と資金が必要です。
しかし、M&Aでは、すでに確立されたビジネスモデルや顧客、従業員、設備などをそのまま引き継ぐことができるため、事業を短期間でスタートさせることが可能です。これにより、ゼロからの起業にかかる労力や時間を大幅に削減でき、初期投資も抑えることができます。
時間とコスト削減の具体例
– 市場調査が不要:すでに市場で展開されているビジネスを買収するため、市場調査や顧客開拓にかかる時間を節約できます。
– 製品やサービスの開発が不要:既存の製品やサービスがすでに完成しているため、開発に費やす時間やコストを削減できます。
– インフラが整っている:オフィスや店舗、製造設備が整っているため、初期投資を抑えられます。
– 従業員がすでにいる:ゼロから人材を集める必要がなく、即戦力として働く従業員が揃っているため、スムーズな事業運営が可能です。
これにより、M&Aは、迅速かつ効率的にビジネスを始めたい人にとって非常に魅力的な選択肢となります。
役員報酬による収入の増加
M&Aを通じて企業を買収し、その経営者となることで、役員報酬という形で収入を得ることができます。一般的に、新規起業では事業が安定するまでの間、収益が少なく、報酬を得るのに時間がかかることがあります。しかし、M&Aで既存の企業を買収すれば、買収した企業がすでに収益を上げている場合、その利益から役員報酬として安定した収入を早い段階で確保することが可能です。
役員報酬のメリット
– 収入の安定化:買収後、企業が利益を上げていれば、役員報酬として早期に収入を得られます。これは、新規事業のように軌道に乗るまで待つ必要がないため、経済的に安定したスタートが切れます。
– 利益に基づいた報酬設定:企業の業績に応じて報酬額を設定できるため、事業が順調であれば高額な報酬を得ることも可能です。
– 経営者としてのスキル向上:企業を経営する立場となることで、経営者としてのスキルが向上し、次のステップやさらなる事業拡大に繋がります。
M&Aによる起業は、早期に安定した収入を得る手段として有効であり、経営に集中する環境を整えやすいという点でも魅力的です。
将来の事業売却による売却益
M&Aを通じて企業を買収し、その企業を成長させた後、将来的にその企業を他の個人や企業に売却することで大きな売却益を得る可能性があります。これがM&Aによる起業のもう一つの大きなメリットです。
事業を成長させ、利益を拡大させることで、企業の価値が向上します。そして、買収時の価格よりも高い金額で企業を売却することで、個人として大きな利益を得ることができます。この手法は、起業家にとって非常に魅力的であり、短期間で資産を築く手段の一つとして多くの人に注目されています。
事業売却による利益のポイント
– 企業価値の向上:買収した企業を成長させることで、企業価値を大きく引き上げることが可能です。ここでの企業価値とは、事業価値を指しています。※事業価値と企業価値の違いは別のブログで、わかりやすく解説します。
– 売却タイミングの選定:市場の状況や業界の成長に応じて、適切なタイミングで事業を売却することで、より大きな利益を得ることだってできます。
– 連続起業の可能性:一度企業を売却して大きな利益を得た後、その資金を使って再度M&Aを行い、さらなるビジネスチャンスを追求することができます。安く買って起業し、売却した後、その資金で連続的に経営とM&Aを繰り返す資本家(起業家)を、シリアルアントレプレナーと呼びます。
例えば、IT業界やサービス業など、成長が著しい業界で企業を買収し、その事業を数年間運営して大きく成長させた後に売却することで、投資額以上のリターンを得ることができます。僕もそのような方を幾度となく相談を受けてきましたが、このように、将来的な事業売却を視野に入れたM&Aは、戦略的な起業方法として非常に有効です。
このように、M&Aによる起業は、迅速な事業立ち上げと安定した収入の確保が可能であり、さらに将来的な事業売却で大きな利益を得るチャンスも秘めています。これらのメリットを活かしながら、しっかりとした計画を立てることで、成功への道が開けるのです。
個人M&Aのコツ・やり方
予算と業種の決定
個人がM&Aに取り組む際に最初に行うべきことは、予算と業種を決定することです。M&Aには多額の資金が必要ですが、個人でも手の届く範囲の企業を買収することが可能です。具体的な予算の目安を把握し、自分がどの業種に適しているかを考えることが、成功への第一歩です。
予算の設定
– 自己資金の確認:まず、自分がどれくらいの資金を用意できるかを確認しましょう。個人M&Aでは、数百万円から数千万円の範囲で取引されることが多いですが、一部の金融機関からの融資を利用することも場合によっては可能です。(ケースバイケースですので、必ず融資が受けられるわけではありませんが、案件や状況によっては十分可能です)
– 融資の選択肢:銀行や信用金庫からの融資を受けることも選択肢に入るでしょう。ただし、融資を受けるには、事業計画の策定や信用調査が不可欠です。なお、経験則上、ベンチャーキャピタルなどが入る企業は、将来性が抜群にあって、将来的な株価を織り込んで評価がつけられるため、個人向けではありません。
– 追加資金の確保:事業運営に必要な追加資金の見込みも含めて、しっかりと計画を立てる必要があります。予期せぬ支出に備えるための予備費も確保しておいたほうが良いでしょう。
業種の選定
– 得意分野を考慮:自分が得意とする業種やこれまでの経験を活かせる業種を選ぶことが最重要です。これにより、M&A後の経営がスムーズに進む可能性が高まります。
– 市場のニーズを分析:どの業界が成長しているのか、将来的な需要があるかを調査することも重要です。例えば、飲食店やIT関連、福祉サービス、飲食、美容系などは比較的個人でもM&Aが行いやすい業種とされています。
– 競争の激しさを考慮:業種によっては競争が激しく、利益を上げるのが難しい場合もあります。競争が激しくない市場や、今後の成長が期待できるニッチな業種を選ぶと、成功する確率が高まります。
M&A案件の探し方
予算と業種が決まったら、次は実際のM&A案件を探す段階です。個人で案件を見つける方法はいくつかありますが、信頼できる情報源を利用することが重要です。
M&Aマッチングサイトの利用
– 現在、インターネット上には数多くのM&Aマッチングサイトがあります。これらのサイトを利用することで、全国の案件を簡単に検索し、自分の条件に合った企業を見つけることができます。
– マッチングサイトの中には、売り手との直接の交渉をサポートするサービスや、専門家のアドバイスを提供してくれるものもあります。これにより、M&Aのプロセスがスムーズに進むでしょう。
M&A仲介会社の利用
– 手数料の高さなどから、あまり個人M&Aではお世話になることは少ないかもしれませんが、仲介会社は買い手と売り手の間に立ってM&Aの交渉を進める役割を果たします。初心者やM&Aの経験がない個人にとっては、プロのサポートを受けることで安心しながら進められるかもしれませんが、手数料が高額なので、あまり個人向きではありません。
– 個人でも手が出せる安価な仲介会社や会計事務所もあります。もし利用するのであれば、専門的なアドバイスやサポートを受けられるため、最終的には効率的に進められるでしょう。
人脈を活用
– ビジネスネットワークや知人からの紹介でM&A案件を見つけることもあります。知人や信頼できる関係者からの情報は、信頼性が高く、競争率も低いことが多いです。
– 自分の業界での人脈を活用し、信頼できる情報を集めることも大切です。
交渉と基本合意書の締結<
M&A案件が見つかったら、次は交渉に進みます。交渉はM&Aの中でも非常に重要なステップであり、今後の成功を大きく左右します。
交渉の進め方
– 価格交渉:売り手と買い手の間で、売買価格について交渉します。売り手の希望価格に対して、買い手が納得できる条件を見つけることがポイントです。ここでは、企業の価値や将来の収益見込みを基に価格を交渉します。
– 条件交渉:単に価格だけでなく、支払い条件や今後の運営方針、従業員の処遇などについても交渉が必要です。双方が納得できる条件を見つけることが、円滑なM&Aを実現するために重要です。
基本合意書の締結
– 交渉がまとまったら、基本合意書を締結します。これは、M&Aの取引内容を大まかにまとめた書類で、売り手と買い手の間で取引の基本条件が合意されたことを示します。
– 基本合意書は、法的な拘束力を持つことは少ないですが、今後の正式な契約に向けて重要な指針となります。ここでは、価格や支払い方法、取引のスケジュール、今後の手続きなどが記載されます。
基本合意書の内容
– 取引価格:最終的な売買価格を記載します。
– 支払い方法:一括払い、分割払いなどの詳細が記載されます。
– 実施スケジュール:取引の最終的な完了日や各段階のスケジュールが明示されます。
交渉と基本合意書の締結は、M&Aの最終段階に進むための重要なプロセスです。この段階から、できれば弁護士や税理士といった専門家の助言を受けながら進めたいプロセスです。
個人M&Aのリスクと注意点
簿外債務のリスク
M&Aにおける大きなリスクの一つが、買収した企業の「簿外債務」に関する問題です。簿外債務とは、企業の財務諸表に記載されていない、隠れた負債のことを指します。この負債が後から発覚すると、予期せぬ費用が発生し、経営に大きな影響を与える可能性があります。
例えば、企業が取引先や従業員と結んだ契約や訴訟リスクなどが簿外に隠れている場合があります。このような簿外債務を知らずに企業を買収してしまうと、買収後に巨額の損失が発生する可能性があります。
簿外債務のリスクを回避する方法
– 財務調査を徹底する:財務デューデリジェンスを実施して、企業のすべての資産や負債を確認することが重要です。特に未払いの税金や隠れた訴訟リスクがないか、弁護士や会計士の力を借りて調査することが必要です。
– 契約内容の確認:売り手との契約を結ぶ際に、簿外債務が後から発覚した場合の補償についても、しっかりと取り決めておくことがリスク軽減に役立ちます。
– 公的機関や専門家の支援を利用:簿外債務の確認には、専門の会計士や法律事務所の協力を得ることが不可欠です。また、M&A専門のサービスや公的機関のアドバイスを受けることも有効です。
従業員や取引先とのトラブルリスク
M&Aによって会社のオーナーが変わることで、従業員や取引先との関係にトラブルが生じることがあります。買収される側の企業では、新しい経営者が現れることに対する不安や、経営方針の変化への不満が原因となり、従業員のモチベーションが低下したり、退職者が増えたりすることがあります。
また、取引先がオーナー交代によって取引を続けるかどうかを再考することもあり、場合によっては取引が中止されるリスクもあります。これらの問題は、企業の運営に大きな影響を及ぼすため、買収前にしっかりと準備することが重要です。
従業員や取引先とのトラブルを回避する方法
– 従業員とのコミュニケーション:買収後、すぐに従業員に対して透明性のある説明を行い、新しい経営方針やビジョンを共有することが大切です。また、従業員の意見を積極的に聞き入れる姿勢を示すことで、信頼関係を築くことができます。
– 取引先との信頼関係の維持:重要な取引先には、買収が完了する前後で直接説明を行い、今後の取引方針やサービス内容に変化がないことを伝えることで、取引の継続を確保することができます。
– 専門家のサポート:人事問題や契約関係に精通した専門家に相談することで、トラブルの予防や解決が円滑に進むことがあります。
デューデリジェンスの重要性
デューデリジェンス(DD)とは、M&Aの際に買収対象企業の実態を徹底的に調査するプロセスのことを指します。このプロセスは、買収の成功を左右する非常に重要なステップです。デューデリジェンスを怠ると、後から重大な問題が発覚し、事業の運営に深刻な影響を与える可能性があります。
デューデリジェンスで確認するべき主な項目
– 財務状況:企業のバランスシートや損益計算書を詳しく調査し、企業が健全な財務状態であるかを確認します。特に、収益の安定性や負債の状況に注意を払いましょう。
– 法務リスク:企業が過去に関与した訴訟や、現在進行中の法的問題がないかどうかを確認します。これには、知的財産権や契約の有効性、規制違反のリスクなどが含まれます。
– ビジネスモデル:企業のビジネスモデルが市場で通用するかどうか、競争力があるかを分析します。特に、業界の動向や市場の将来性を考慮に入れ、長期的に成功できるかどうかを評価します。
– 人材と企業文化:企業の成功には従業員のモチベーションやスキルが大きく影響します。買収後も円滑に運営できるかどうか、企業文化が自分の経営スタイルとマッチするかを調査します。特に、IT系の業種などでは、人材こそ最重要資産です。従業員のスキルシートや、できれば職務経歴書などを通じて、手掛けたプロジェクトや保有している資格、スキルを入念にチェックしておいたほうが良いでしょう。
デューデリジェンスの重要性と効果
– リスクの早期発見:財務や法務に関するリスクを早期に発見することで、予期しない損失を防ぐことができます。特に、簿外債務や隠れた法的問題がある場合、これを事前に発見できれば、後々の問題を回避できます。
– 交渉材料の確保:デューデリジェンスを通じて得た情報は、M&A交渉時に重要な交渉材料となります。例えば、財務状況が思わしくない場合には、価格の引き下げや契約条件の見直しを提案することができます。
– 事業計画の精度向上:買収後の経営計画を立てる際、デューデリジェンスで得た情報を基に、具体的で実現可能な計画を作成できます。これにより、事業の成長をスムーズに進めることが可能です。
デューデリジェンスを徹底して行うことで、M&Aに伴うリスクを最小限に抑え、成功確率を高めることができます。費用はかかりますが、専門家を活用して、細部までしっかりと調査を行うことが、のちのち買収後の安定した経営につながっていきます。
おすすめのM&Aサービス
M&Aマッチングサイトの利用
M&Aを検討する際に、手軽に買収や売却の案件を探すことができるのが、M&Aマッチングサイトです。これらのサイトは、インターネットを通じて売り手と買い手をつなぐプラットフォームで、個人が企業を探す際に非常に便利です。特に、初めてM&Aに挑戦する人にとって、さまざまな案件を比較検討できるため、理想のビジネスを見つけるのに役立ちます。
M&Aマッチングサイトの特徴
– 簡単な検索機能:予算や業種、エリアなどの条件で企業を検索できるため、自分に合った案件をすぐに見つけられます。
– 案件が豊富:飲食業、IT企業、サービス業など、さまざまな業種の案件が掲載されており、自分の得意分野や興味のある分野に絞って探すことが可能です。
– 手軽さ:インターネットを使って24時間いつでも案件を確認できるため、忙しい人でも手軽に利用できます。
– 匿名性:初期的には、売り手と買い手の双方が匿名で交渉を進められるため、慎重に取引を進めたい場合でも安心です。
代表的なM&Aマッチングサイト
– TRANBI(トランビ):日本最大級のM&Aプラットフォームで、多数の案件が掲載されています。個人でも利用しやすいサービスが整っており、無料で利用できるプランもあるため、初心者にもおすすめです。
– ビズリーチ・サクシード:ビジネスSNS「ビズリーチ」が運営するM&Aマッチングサイトで、豊富な業種の案件を扱っています。中小企業から個人事業主まで、幅広い規模の企業が登録されており、個人M&Aに適しています。
– M&Aクラウド:スタートアップやベンチャー企業のM&Aを中心に扱っており、ITやテクノロジー関連の企業を探している人には良いでしょう。投資家や企業も多く登録しており、スピーディーに交渉が進められるのが特徴です。
– バトンズ:日本M&Aセンターの子会社バトンズが運営するプラットフォームで、日本の中で最大級の売り手・買い手の登録者数を誇ります。最も個人M&Aで成約しているプラットフォームであり、最初に登録しておくべきマッチングサイトでしょう。
M&Aマッチングサイトの利用手順
1. サイトに無料登録。
2. 自分の条件に合った企業を検索。
3. 気になる案件があれば、サイトを通じて問い合わせや交渉を開始。
4. 実際にM&Aを進める際には、必要に応じて専門家(弁護士や会計士)のサポートを依頼。
これらのサービスを利用することで、効率よく希望の企業を見つけ、スムーズにM&Aを進めることが可能です。
事業承継・引き継ぎ支援センター
「事業承継・引き継ぎ支援センター」は、経済産業省が運営する公的なM&A支援機関で、特に中小企業の事業承継をサポートすることを目的としています。全国にセンターが設置されており、無料でさまざまな相談やサポートを受けることができるため、初めてのM&Aでも安心して利用できるのが特徴です。
事業承継・引き継ぎ支援センターの主なサービス
– 無料相談:中小企業の事業承継に関する相談を無料で受け付けており、経営者が抱える課題や悩みに対して専門家がアドバイスを提供します。個人M&Aに関する具体的な質問にも対応しており、買収のプロセスや手順についての疑問を解消できます。
– マッチングサービス:売り手と買い手を引き合わせるマッチングサービスを提供しています。地域に密着したサービスを展開しており、地元企業の買収や事業引き継ぎを希望する個人に適しています。
– 専門家の紹介:弁護士、会計士、税理士など、M&Aに必要な専門家を紹介してくれるサービスもあります。専門家のサポートを受けることで、リスクを回避しながらM&Aを進めることが可能です。
利用の流れ
1. 最寄りの「事業承継・引き継ぎ支援センター」に相談予約を行います。
2. 面談を通じて、自分の希望や条件を相談します。
3. 売り手や買い手の企業が見つかれば、センターのサポートのもとで交渉を進めます。
4. 必要に応じて、M&A専門の仲介会社や弁護士を紹介してもらい、契約までをサポート。
このように、事業承継・引き継ぎ支援センターを利用することで、安心して個人M&Aを進めることができます。特に初めてのM&Aでは、専門的な知識やサポートが重要になるため、公的機関のサポートを利用することで成功率を高められます。僕の経験上も、引き継ぎ支援センター経由で買収・起業された方も何名かいらっしゃいました。
M&A仲介会社に依頼する
M&A仲介会社は、売り手と買い手の間に立ち、スムーズにM&Aを進めるためのサポートを提供してくれる専門機関です。M&Aに関する専門知識や経験は素人よりはありますが、仲介会社の本質は営業力であるため、複雑なM&Aには不向きですし、対応できないでしょう。しかし、個人で引き継ぐ小規模な案件の場合は、進め方もシンプルなので問題ないでしょう。ただし、前述の通り、小規模な案件のわりに手数料が高いため、買収価格よりも手数料のほうが高くなってしまうというケースも仲介会社によっては起こりえます。
M&A仲介会社のサービス内容
– 案件紹介:仲介会社は、売り手や買い手となる企業の情報を豊富に持っており、自分に合った案件を紹介してくれます。個人が自力で見つけるのが難しい案件にもアクセスできるため、希望に近い企業を見つけやすくなります。
– 交渉サポート:売り手と買い手の交渉を円滑に進めるため、仲介役としての役割を果たします。価格交渉や契約条件の調整など、複雑な交渉を代行してくれるため、M&Aの進行がスムーズになります。
– 契約手続きの支援:最終的な契約書の作成や、法律に関する手続きをサポートしてくれます。専門的な知識が必要な部分を仲介会社が担うため、リスクを最小限に抑えた取引が可能です。
– デューデリジェンス:買収する企業の財務状況や法務リスクを調査するデューデリジェンスも、仲介会社がサポートします。ただし、仲介会社は自社単独でデューデリジェンスはできない立場にいます。そのため、サポートはするものの、デューデリジェンスを実際に行うのは買い手側(専門家)ということになります
いかがでしたでしょうか。個人M&Aは、起業するためには非常に有効かつ合理的な方法であることがお分かりいただけたかと思います。一長一短ある起業方法ですが、事前にリスクを回避する準備を怠らなければ、大変スムーズに軌道に乗せてスタートを切ることができるはずです。
もし買収に必要なサポートやノウハウ、ヒントなどが必要であれば、ご遠慮なく問合せよりご連絡いただければと思います。
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